炭坑夫の末裔たち

かつて炭坑で賑わったまちの日常譚。飽くまでフィクション、です。

2014-01-01から1年間の記事一覧

図書館のジイさん、自転車のバアさん

日曜日のためか市立図書館は多くの利用者が来館していた。 しかし、その割には職員数が足りないように思えた。普段よりも1,2人少ないのではなかろうか?貸出カウンター前には手続きを待つ人々が滞留している。 いや、滞留の原因は員数不足だけではないよ…

三上さんの隣のカルト

近所のアパートで独り暮らしだった三上さんは、72歳という割には風貌も若々しく、人懐っこくて社交的な性格だった。スリムな体形にいつもジーンズ。もちろん"Mom Jeans"なんかじゃない、普通のジーパンだ。口ひげをたくわえ、晩年のチェット・ベイカーにもど…

ブタ兄弟

この町に胡散臭い人間はゴロゴロといるが、顔の広さとフットワークの軽さでいえばこのブタ兄弟の二人だろう。 兄の方はもう70歳位になるはず、最近はあまり姿を見ない。先代の故林家三平に似た風貌。世間の評判では、「兄の方がまだマトモで信用できる」との…

ヨシオ婆さん

ばってん荒川、志村けん、由利徹、桑原和男、青島幸雄・・・。著名な「男の婆さん」を挙げてみた。 三年前に亡くなったヨシオ婆さんは、市井の人だが、本物の「男の婆さん」だった。 ヨシオ婆さんが生まれたのは、県北部の観光地として有名な城下町。古風で閉…

石炭を売っていたという早野の爺さん

早野という爺さんがいる。 だいぶ老いてはいるが、気はシッカリしている。昼間、自転車をすいすい漕いでどこかへ出かける姿がよく見られる。 暇なのか元来の話好きなのかは知らないが、近所の者を捕まえてはいろいろと話して聞かせる。例えば、電車の中で突…

宅配ピザ

このまちの人口は17万人ちょい。その割には多すぎるのではないかと思われる商売がいくつかある。整骨院、歯科医院、理容・美容院、スナック、ケーキ屋など。整骨院の多さはここがかつての炭坑町であったことの名残だろう。スナックの多さは、このまちには…

Fさんの奥さんが立ち上がった日

佐村河内守とかいう人が話題になっている。 私はつい数日前までこの人の存在を知らなかった。このずいぶんと重たそうな名前を初めて見たときは、「サムラカワチノカミ」という昔の殿様の話かと思った。 世間には麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚のエピソードと…