炭坑夫の末裔たち

かつて炭坑で賑わったまちの日常譚。飽くまでフィクション、です。

図書館のジイさん、自転車のバアさん

 日曜日のためか市立図書館は多くの利用者が来館していた。

 しかし、その割には職員数が足りないように思えた。普段よりも1,2人少ないのではなかろうか?貸出カウンター前には手続きを待つ人々が滞留している。

 いや、滞留の原因は員数不足だけではないようだ。70歳ちかい老人男性への対応で1ヶ所の窓口と2人の職員ががふさがってしまっていたのだ。なにをトラブっているのかと様子を見る。

 老人はタウンページを開きながらなにか喋っている。職員が「いやあ、◯◯町には個人病院はあっても総合病院はないようですよ・・・。」と言うと、老人は「そんなことあるかあー!!」と声を荒げる。「わしの親戚からそう聞いちょるんじゃあ!」

 どうやら誰かの見舞いに行く途中、道を聞くためだけにこの図書館へ寄ったらしい。図書館なら地図も電話帳もある。泥のついた長靴に作業着、どうやら郊外のほうから来た様子だ。このへんの地理には不案内なのだろう。しかも覚えている病院名が間違っているみたいで、図書館職員も知らないしタウンページにも載っていない。

 どう考えても、このジイさんが親戚に再確認するなり、出直すなりするしか無い問題なのだが、しかしジイさんは図書館の職員が解決して当然という態度だ。

 

 ちょっと前の出来事を思い出した。

 道で自転車に乗ったバアさんに「☓☓町はどのへんか?」と尋ねられた。さらに真っ直ぐ300m位進んだ先に少し大きな交差点があり、そこから向こうが☓☓町だと教えてあげた。すると今度は「共産党の生活相談センターはどこか?」と言う。そんなのは知らないので、「それは判らない」と応えると、ヒステリックな声で「ちょっと、すぐ調べてよ!!」と叫ぶ。

 ムカッと来たので、

 「ハア!?あんた何様のつもりだ!?大体、目的地のあてもなく、自分で調べもせず出てくるなんて、いい歳こいてあんた馬鹿か?」

と強めに諭してやり、立ち去った。

 

 高齢者、というよりも世代特有の問題かもしれない。たんに団塊周辺特有の横柄さの問題かもしれない。

 ただ、既に高齢化した地域の日常ってのはこんな感じだ。